ビジネスパーソンインタビュー vol.01

「ネスカフェ」や「キットカット」など、日本でもおなじみの製品を展開する世界最大の総合食品飲料会社であるネスレ。その日本法人において、代表取締役社長兼CEOを務める高岡浩三さんと、常務執行役員 飲料事業本部長を務める深谷龍彦さん。日本から発信するグローバルブランドのあり方、ビジネスにおけるファッションの重要性、リーダーの資質についてまで、ネスレの躍進を担うお二方からお話を伺いました。

※所属・役職等はインタビュー当時のものです。


-----お二方が現在注力しているビジネスについて簡単にご紹介ください。

高岡様:私たちネスレ日本は、「ネスカフェ」や「キットカット」をはじめとする様々な飲料、食品ブランドを展開しています。その中で、現在注力しているビジネスの1つが「ネスカフェ アンバサダー」です。市場は急速に変化してきており、従来のIn Home(家庭内)に加えて、Out of Home(家庭外)での消費が今後ますます増えていくと想定しています。家庭外で最もコーヒーが消費されるオフィスに、コーヒーマシンを無料で貸し出し、専用コーヒーカートリッジの定期購入と代金回収を「アンバサダー」と呼ばれる職場の代表者に協力してもらう日本発のビジネスモデルは、スイス本社からも注目されており、世界中のネスレでも関心が高まっています。

深谷様:一人世帯、二人世帯が増えている今、Out of Home(家庭外)に私たちの成長の源泉があると考えています。その一方で、専用のコーヒーマシンがあれば家庭内でも簡単においしい「ネスカフェ」を楽しめるため、In Home(家庭内)市場においてもさらなる発展を目指しています。従来のインスタントコーヒーは瓶に入った粉をスプーンですくい、カップに入れてお湯を注ぐものが大半でした。しかし現在は、専用のコーヒーマシン「ネスカフェ バリスタ」で作る私たちのレギュラーソリュブルコーヒーが急速に普及しています。将来、このスタイルが日本の皆さんにとって当たり前となり、「昔はスプーンで入れて作っていたの?」と驚かれるような時代にしていきたいと思っています。

-----今回、お二方が「NIKKE 1896」ブランドのアンバサダーとしての役割を引き受けてくださった理由をお聞かせください。

高岡様:まず、ご指名いただいて本当に光栄です。CEOとして私自身、自分の考えるネスレのイメージと自分のファッションは一致させるべきだという想いがあり、仕事で公の場に出る時のファッションは非常に重要視していました。過去20?30年と比較して、さまざまなメディアを通して自社のブランドや企業イメージを伝えていくことの意義、影響力が格段に大きくなっている今、コミュニケーション能力も当然ですが、やはりファッションは大切な要素です。そういった意味でも、日本毛織さんにスタイリングしていただき、品格と格式あるブランドのアンバサダーに就任することは、ネスレにとってもありがたいお話だと思い、お引き受けさせていただきました。

深谷様:お声がけいただき本当にありがとうございます。「日本の素晴らしい技術を復活させ、世界に向けて発信していきたい」というお話を伺い、扱う商品は異なりますが、私たちネスレとマインドの根底の部分では同じだと思いました。神戸にある企業としての新しいご縁でもありますし、何か共鳴していけるのではないかと直感的に思ったのが、お引き受けさせていただいた正直な理由です。

-----「NIKKE 1896」は「日本の生地を着る価値を世界へ」というスローガンのもと、日本のウールブランドを世界へ知らしめる、というコンセプトで事業を立ち上げています。
世界最大の総合食品飲料企業としてグローバルで活躍するネスレですが、日本市場においても独自の成長を続けられております。その成長の秘訣や、日本の独自価値が世界に認められる働きについて、お聞かせください。

高岡様:ブランドをつくることは、時間とマーケティングを重ねながら無形の財産を形成してくことなので、企業活動の中では最も重要です。日本毛織さんがB to BからB to Cに進出し始めた今、本当の意味でのブランド化に取り組まれることになるのではないでしょうか。例えば、チョコレートやコーヒーもそうですが、原材料の中にもブランドが存在します。カカオならガーナが良いとか、コーヒーならケニアやコロンビアが良いとか。日本毛織さんはこれまで生地ブランドに位置していましたが、スーツを生地ブランドで選択するか、生地も含めたスーツブランドとして選択するかで言えば、多くの消費者の購入基準は圧倒的に後者になると思います。
だからこそ、生地から最終製品になるまでを「NIKKE 1896」というブランドで確立していくことは、今後も大きな開拓余地があり、日本毛織さんの歴史的にも大きな意味があるはずです。ヨーロッパのブランドに傾倒しがちな昨今において、日本ならではの品質力のあるブランドが生まれたことは、日本人として非常に嬉しく、誇りに思います。「キットカット」の本家であるイギリスの売上を追い抜いた私たちとしても、同調する想いです。

深谷様:「NIKKE 1896」で作られている生地は、すべてニュージーランドで開発した原毛を使っていると伺いました。それを日本の職人さんたちの技術でクオリティの高い生地に仕上げている現状は、私たちと非常に似ています。「ネスカフェ」「キットカット」を例にすれば、コーヒー豆やカカオ豆などの原材料は、日本では収穫できないものばかりです。日本毛織さんと同様に、私たちもそういった原材料を日本に持ち込み、より美味しいものとして製品化し、たくさんのお客様に喜んでもらう。そのための進化とこだわりは、決して無くなることはありません。おかげさまでスタンダードなものはもちろん、日本独自でつくった抹茶味も、海外のお客様から非常に高い評価をいただいています。
「日本のウールはとても品質が良いにも関わらず、国内ではファストファッションが旺盛の時代。なかなか品質に伴った価値を認めてもらっていない」というお話も伺いましたが、国内だけではなく、世界に向けて日本のウールの価値を打ち出していくタイミングで応援させていただけるのは、とてもありがたいことだと思っています。

-----高岡CEOは、以前政治・経済部門でベストドレッサー賞を受賞していますが、ビジネスシーンやメディアへの露出において気にかけていることや「服が持つ力」について、お聞かせください。

高岡様:着る物、身に付ける物、洋服やセンスは、自分の人格の一部であると思っています。公の場に出ることが多いため、なおさらですね。見た目は重要ではないという日本古来の文化や風潮もありますが、選挙立候補者も着る物や印象に残る色を考え、顔の表情までトレーニングするほど、時代は変わりました。そこまでやる必要はないかもしれませんが、基本的に99.9%の人が私のことを深く知らないと思うようにしているので、言動はもちろん、経営者として見た目には常に気をつかうようにしています。
コーディネートの際もアイテム単体で選ぶのではなく、ジャケット・シャツ・ネクタイ・チーフ・パンツ・ベルト・シューズといった具合に、トータルで考えるのが自分流。メガネや時計も洋服に合わせるようにいくつか持っていますが、やっぱり洋服へのこだわりがいちばんですね。「栄養・健康・ウェルネス」をビジョンに掲げている企業として、自分自身もそのビジョンを体現して若々しく元気であり続けたい。着る物・持つ物すべてが、自分のイメージに合致するか否かはとても大切だと思っています。

深谷様:社内や社外を問わず多くの方の前でプレゼンテーションをする機会が増えており、話の中身はもちろん大事ですが、プレゼンテーションとはその場に立った瞬間から既に始まっていると実感しています。見た目の第一印象が悪ければ、話の中身がどれだけ良くても絶対に影響しますからね。今の役職に就いてからは自分の身なりにも、さらに気をつけるようになりました。
一昨年までスイスで勤務していたんですが、みなさんご存知のように時計の聖地であり、どこに行っても専門店ばかり。知らないブランドも多く、それを知るだけでも楽しかったことを覚えています。私自身まだまだですが、日本毛織さんにも勉強させていただきながら本物に触れ、これからもファッションを楽しんでいきたいと思っています。

-----お二方がビジネスで成功を成し遂げた要因と、リーダーにとって不可欠な要素について、お聞かせください。

高岡様:個人的にリーダーとは「チームを勝ちに導ける人」であるべきだと、常々話しています。ただリーダーシップを発揮して先頭に立つだけでは、永くは付いてきてくれません。勝ち負けにこだわり、チームを牽引し、勝利に導くことが重要な資質だと思っています。また、海外の一流の経営者やリーダーは、経営の中身だけではなく、ファッションも一流です。しかし、諸外国と比べて日本はどうでしょうか。数字での成果は当然として、ファッションでも勝負できる方々が増えてきてほしいし、私も常にそんなリーダーでありたいと自分に言い聞かせています。

深谷様:以前、世界中のネスレからミドルマネジメント層が集まったリーダーシップトレーニングがあり、弊社の高岡がスピーカーとして登壇した時の話です。スピーチ後、海外のメンバーたちが私に近づき、「高岡のもとで仕事できることが本当にうらやましい!」と話しかけてきました。高岡自身が勝ち続けることに対して誰よりもどん欲であり、社員全員で勝ち続けながら成長している今、学ぶべきことは本当にたくさんあります。私はこのリーダーを間近で支えながら、少しでも近づけるように日々勉強しているのが正直なところです。

-----「NIKKE 1896」のスーツを着用した感想をお聞かせください。

高岡様:お世辞抜きで、最初に着用した時に「人生でいちばんフィットした!」と思いました。生地と縫製のバランスが良く、しかも軽くてやわらかい。私はパンツにできるシワが嫌いで、ホテルに宿泊する際はいつもプレッサーを用意してもらい、自分でこまめにプレスするほど。でも、このスーツはシワができにくいんですね。やはり、生地の品質力と縫製の技術力の賜物なのでしょうか。本当に驚きましたし、ありがたいと思いました。

深谷様:関西生まれなのでこんな言葉になりますが、生地を触った時とフィッティングした時に「やばい!」と感じました。普段のスーツはずっと着ていると肩が内側に入ってツライのですが、「NIKKE 1896」のスーツだと肩がとてもラクなんです。体がスッと吸い込まれるように着用でき、引き締まる感覚もあるので「今日も頑張ろう!」という気持ちにもなれます。まさに、特別なシーンに着用したいスーツですね。

さまざまなメディアやシーンを通じた企業イメージの発信はもちろん、グローバルを舞台にビジネスを展開していく際には、ファッションの力が大きな影響を与えることを実感しました。リーダー層の方、これからその立場を目指す方は、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。あなただけの一着を仕立てる「NIKKE 1896」なら、あなたの人格を必ず素敵に表現してくれるはずです。


インタビュー2017年12月